粕谷勇人 yuto kasuya 〜前編〜

2019年4月5日、Wagayado晴-HaLe-の解体工事が始まるらしい。粕谷勇人と篠村恭太の二人で立ち上げた居場所は、多くの人に愛され、惜しまれながら、幕を閉じました。

Wagayado晴-HaLe-は、札幌駅から徒歩8分程度の古民家を改装して生まれたゲストハウス。

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「最後に館内を歩いてみた。三度も塗り直した壁、色んな人が手伝ってくれた床貼り、大工さんが作ってくれたベット、思いの詰まった晴-HaLe-のロゴ。360度どこを見渡しても思い出がある。

晴-HaLe-はオープンして3年間一度も休まなかった。だから今日からゆっくり休んでほしい。

今までありがとう。お疲れ様でした、おやすみなさい。」

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ゲストハウスでありながら、口コミの高評価により、札幌駅周辺の高級ホテルを抑え、楽天札幌ホテルランキングの一位になったWagayado晴-HaLe-。様々な理由があり、宿を閉ざすことになったけれど、Wagayado晴-HaLe-は、ゲストだけじゃなく、ヘルパーやバイト、地域住民と、緩やかな関係人口を築き、たくさんの人に愛されていました。

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通称「晴-HaLe-の番人」

相棒の篠村恭太さん(写真・左)は、冗談交じりに、彼のことをそう呼んでいました。「勇人がいれば大丈夫。」と。

粕谷勇人は、あまり多くを語らない。シンプルに口下手だという理由もあるのだけれど、言葉で伝えるより背中で伝えたいタイプなのかもしれない。

合同会社TO GOの代表社員を経て、現在は、レッドホーストラスト株式会社の宿泊事業部・部長という立場に。起業家から、会社に入り、部長になるという大きな変化の中には、様々な決断がありました。

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このインタビューは、2018年6月25日に行っています。

それから、もうすぐ一年。

HÄNd (ハーンド)- hand in hand – のインタビューでは、“ 変化 ”に視点をあてたいと思っています。

人生に“ 変化 ”はつきもので、たった数ヶ月であっても人生は劇的に変わっていくことがあります。

今と過去と未来。変わっていくものと、変わらないもの。

今回の“ 粕谷勇人〜前編・後編〜 ”では、彼の仕事や人生観について話を聞いた、2018年6月25日に行ったインタビューを元に、再編集を加え、記事を作成しました。近日、一年経っての「今」も執筆予定です。

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ー Wagayado晴-HaLe-が、ゲストハウスでありながら、札幌駅周辺の高級ホテルを抑え、楽天一位を取れたのって、どうしてなのでしょう?

規模感の小ささで口コミの点数が高くなりやすいというのはあるのですが、一人一人に対する丁寧なケアを心がけた接客をしていました。どんな相手にも諦めないでコミュニケーションを取り続けた、というか。

Wagayado晴-HaLe-は、ほっこりがコンセプトの宿なのですが、ゲストハウスに泊まったことのない人でも安心して滞在してもらえるように、気を配っています。

ゲストハウスに慣れていないようなタイプの人もくるんです。旅が好きな人は、すぐに心を開いて打ち解けてくれるんですけど、ゲストハウスに慣れていないような、心を閉ざしがちな人に対しても、安心してリラックスできるように丁寧な配慮をしてきました。どんなゲストさんに対しても、コミュニケーションを諦めない、というか。

その一人一人への丁寧な声がけの積み重ねが、高評価に繋がったのだと思っています。

キッチン

ー オペレーションをつくるのが得意だと、相棒の篠村くんから聞いています。Wagayado晴-HaLe-は、アルバイトが多いのに、きちんとサービスが行き届いていることに定評がありますが、スタッフ教育も担当してるんですよね。どんなことをやっているのですか?

やっていることは、至ってシンプルですね。

僕自身が、難しいことが苦手なので「誰でも、簡単にできる」ということを大事にしています。

晴-HaLe-は、基本的に、責任者一人とバイトで回せることを意識して、オペレーションを考えています。

例えば、スタッフの業務とかも、すべてチェックシートにして、スタッフが自分で確かめられるようにしているんです。チェックするだけで、仕事が完了するから、簡単だし、誰でもできる。

だけど、さじ加減は大事にしてます。

晴-HaLe-のような小さな空間では、機械的にスタッフが動いてしまうと、ゲストとの温かな交流が生まれなくなってしまう。だから、チェックシートをやり過ぎてしまっても、ダメなんですよね。機械的になり過ぎてしまって、スタッフが生き生きと働けるようなくなってしまうから。

本棚

ー コミュニケーションや人を魅力になるゲストハウスにおいて、なぜアルバイトで宿を回せるのでしょう?

確かに、人の魅力は売りになるんですけど、誰がいても、同じクオリティのサービスが提供できることを考えて、スタッフ教育を丁寧に行なっています。

たとえば、人気のカフェってスタッフが変わっても、お店の雰囲気やサービスには、安定感があると思うんです。

僕ら経営陣がいなくても、人が変わっても、変わらないクオリティで回せるようにしたいと思っていて。

あと掃除は、自ら率先して、徹底的にやっています。

元々、ホテルの専門学校に通っていたので、ホテル接客を学んでいて、ホテルで一年間勤務もしました。だから、晴-HaLe-の掃除や接客も、ホテルみたいにしたいと思っているところはあります。ゲストハウスって、価格が安いし、雰囲気やコミュニケーションを目当てに来てくれることも多い場所なので、そこまで丁寧にやらなくてもいいのかもしれないんですけど・・・だけどゲストさんにくつろいで欲しいから、徹底して細部まで掃除や接客をするようにしています。

僕は、あんまり周りに注意したりとかうるさく言わないようにしてるんですけど、自分がお手本になることで、周りが気づいてくれたらいいなって思っています。

奥のリビング

ー スタッフに「お掃除おじさん」とか「なんでも片付けちゃうおじさん」と愛情を込めてからかわれているのをたまに耳にします(笑)

「なんでも片付けちゃうおじさん」と言われるのが嫌なので、全ての物の場所をテプラで表示をして、スタッフが全部自発的に物を片付けられるようにしました(笑)時短にもなりますし。

ー ホテルの接客をゲストハウスで考えている。例えば、やかんが90度ずれていたら、誰もやらなくても淡々と直す。スタッフは同年代だったり、友人関係だったりする。友人同士のノリもあり周りのスタッフ達に「ゆーと、掃除好きなだけじゃん!」と、ちょっぴりからかわれても、黙々と片付け、掃除をして、朗らかに笑っている。だが、その背景では、どうすればお客さんが落ち着いて滞在できるかを徹底して考えているという。

ホテルだったら当たり前にやることを、ゲストハウスでもやってるだけなんです。僕たちは、ゲストハウスが好きでゲストハウスを始めたわけじゃなかった。たまたま自分たちにやれそうなビジネスが、ゲストハウスだったから始めたというのがきっかけでした。

僕も相棒のしのも、ゲストハウスに泊まったことが、ほとんどないんですよ。

だから、ゲストハウスってイメージにとらわれずにできているのかもしれません。正直、いまだに他のゲストハウスのことよくわからないし・・・僕は、ホテルの接客が好きだから、Wagayado晴-HaLe-もそうゆう風にしたいと思ってやっています。

たとえば、Wagayado晴-HaLe-では、チェックインに時間をかけて、密なコミュニケーションを大切にします。一人一人にお茶を出し、丁寧に宿のことを説明をすることで、安心して宿に滞在してもらえるように心を配っています。

チェックイン

ー ゲストハウスというフランクな宿でありながら、一流ホテルの接客を探し求めた。その姿勢が、口コミの高評価に繋がっていたのかもしれない。ほっこりがコンセプトのゲストハウスでは、あたたかな交流と共に穏やかな時間が流れていたのだろう。

函館-tune

2018年3月16日。函館の湯の川に、Tune Hakodate Hostel & MusicBalをオープンさせた。tuneでは、同世代の仲間たちを社員に迎え、会社として新たなステップアップをした。

任せるところは、丸投げする。そこにあるのは、信頼。Wagayado晴-HaLe-とは全く違うコンセプトのゲストハウス・シェアハウス・ミュージックバルの複合施設。

縁もゆかりもない函館で、何もかもが初めての挑戦になる。

函館-tune

20ベッドあまりのWagayado晴-HaLe-に対し、Tune Hakodate Hostel & MusicBalは、80ベッド。規模感が大きく代わり、今、新たなオペレーションづくりに励んでいる。

少ない人数でいかに効率よく回せるか?そのための一つの策が、丁寧なポップづくりにあるという。

Wagayado晴-HaLe-では、ゲストとコミュニケーションを取るために、敢えてポップを置かなかったんです。わからないことは、スタッフに聞いてもらうことで、コミュニケーションが生まれるから。

だけど、規模感の大きいtuneでは、80ベッドあるから、チェックインなどが重なると、どうしてもゲスト一人一人にスタッフが声かけをできないタイミングが出て来てしまうんですよね。だから、たとえば、洗い物のタオルや冷蔵庫の使い方に至るまで、海外のゲストでも、ポップを見ただけで、自分でなんでもできるように、細部に至るまで丁寧にポップをつくって設置しました。

見ただけで、わかるというのを、すごく大切にしています。

yuto-kasuya

ー 彼の周りでは、スタッフもゲストも地域の人たちも、いつも楽しそうに居心地良さそうにしているように見える。休みの日であっても、まるで学校の放課後のように人が自然に集まってくる、そんな居場所をつくっている。

「晴-HaLe-でもそうですけど、函館にtuneつくってくれてありがとうって言ってもらえることがあって。それが、一番嬉しいです。”つくってくれてありがとう”なんて、なかなか言えないですよね。」

ー 晴-HaLe-からスタートした、ほっこりとくつろげる居心地の良い輪は、コンセプトの違う函館・湯の川にできたtuneでも、確かに息づいている。

 

粕谷 勇人(かすや ゆうと)
https://www.instagram.com/kasuyayuto/

Tune Hakodate Hostel & MusicBal
http://tune-hakodate.com/

 

インタビュー・執筆 natte
写真 inaba keita

 

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