“腸と脳”

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“腸と脳──体内の会話はいかにあなたの気分や選択や健康を左右するか” エムラン・メイヤー (著), 高橋 洋 (翻訳)

ー 心と腸のコミュニケーション

私たちは、ごく自然に他人の顔から情動を検知する。
この能力は、言語、民族、文化、国籍を超えて、それどころか怒ったイヌや怯えたネコを思い浮かべてみればわかるように、動物でさえ作用する。

自然は人間に、他者が示すさまざまな情動にただちに気づき、反応する能力を与えたのだ。情動が表情として外部に現れるのは、顔面の数々の小さな筋肉に、脳が特定のパターンでシグナルを送るからである。

それぞれの情動には対応する独自の表情がある。

だから周囲の人々は、一瞬であなたの表情を読み取れる。

つまり、私たちは皆、開かれた本なのだ。

ところが胃腸に対する情動の影響については、私たちは何も知らないに等しい。

先の例でいえば、後ろの車に煽られたあなたが怒り心頭に発しているとき、脳は顔面の筋肉とともに消化器系に特徴的なパターンでシグナルを送り、消化器系はそれに対して強い反応を示す。

割り込んできたドライバーに腹を立てているあいだ、あなたの胃は激しく収縮する。

その収縮で胃酸の分泌が増大し、朝方食べたスクランブルエッグがなかなか胃から出ていかなくなる。

同時に、腸はねじれ、粘液や他の消化液を分泌する。不安なときや動揺しているときにも、パターンは異なるが類似の胃腸の反応が生じる。意気消沈すると、腸はほとんど動かなくなる。実のところ、脳で生じるいかなる情動も、胃腸の活動に反映されることが現在では知られている。

このような状態における脳の神経活動は、他の組織にも影響を及ぼし、あなたが感じるあらゆる情動に各組織が協調して反応する。

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たとえばストレスを受けると、心拍は高まり、首や肩の筋肉は緊張する。

リラックスしているときは、それとは逆の反応が生じる。

しかし、腸との間に固定配線された結合を持つ脳は、腸との結びつきが非常に強い。

人はつねに腹部に情動を感じており、その事実は、

「胃が締め付けるような感じ(stomach tied up in knots)」

「はらわたが引き裂かれるような経験(gut-wrenching experience)」

「そわそわして落ち着かない(butterfies in your stomach)」

など、言葉にも反映されている。

このような感覚を引き起こしているのは、情動を生成する脳の神経回路であり、情動と脳と胃腸は、独自の結びつきを形成している。

(36-37p)

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ー マイクロバイオームの改善による健康増進の指針

( マイクロバイオームとは?ヒトの細胞数に近い約40兆個の細菌が、ヒトの身体には存在している。その体内にすむ膨大な数の細菌が,マイクロバイオームというまとまりをなし、ヒトの細胞とやり取りをしながら,私たちの身体の生理機能をコントロールしている。その持ちつ持たれつの様子は,究極のソーシャルネットと呼ぶにふさわしい。)

・自然で有機的なマイクロバイオームを育成する
⇨不健康な食品添加物を避け、有機的な食べ物を選ぼう

・動物性脂肪を控える
⇨動物性脂肪は、加工品も含め、ガンと関係していると言われている。大量の動物性脂肪の摂取は、脳の健康を損なう。

・腸内微生物の多様性を最大化する
⇨脂肪分の少ない肉を適量食べることに加え、植物繊維の形態で種々のプロバイオティクスを含む食物の摂取を増やす。わさびから唐辛子、ミントから甘み、苦味に至るまで、各種薬草や植物性化学物質に反応する多数のセンサーが腸には備わっている。薬草や食物の摂取を通じて発せられるシグナルは、腸管神経系や脳に送られ、消化や感情に多大な影響を及ぼす。

「植物性食物を主体とする、多様性に富む食事を維持すべし」

・大量生産された食品や加工食品は避け、なるべく有機栽培で育てられたものを食べる

・発酵食品やプロバイオティクスを摂取する

・妊娠時には特に栄養とストレスに留意する

・食べ過ぎない

・断食して腸内微生物を飢えさせる

・ストレスフルなとき、怒っているとき、悲しいときは食べるのを控える
⇨何かを口にするときは、心と身体をチェックして、湧き上がる情動に注意を向けよう。ストレスを受けているあいだや、不安、怒りを感じているときには、腹に食物を詰め込んで事態を悪化させることは避けるべきだ。

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・みんなで食事を楽しむ
⇨ネガティブな情動が「脳ー腸ーマイクロバイオータ」相関に悪影響を及ぼすのに対し、幸福、喜び、社会的な絆の感覚は良い影響を与えるはずだ。幸福を感じているときに食事をすると、脳は腸に、腸内微生物を喜ばせる特殊な成分のごとく作用するシグナルを送る。すると満足した微生物は、脳の健康に資する代謝物質を生成する。そうわたしは考えている。いくつかの科学論文で論じられているように、地中海式食事法で得られる健康への恵みのいくぶんかは、それを実践している国々でよく見られる、親密な社会的関係やライフスタイルに由来するらしい。社会的な絆の感覚や健康感が、腸や、マイクロバイオーたの反応に影響を及ぼすことは、ほぼまちがいない。

まとめ・絵・写真 natte