“ホーキング、宇宙を語る”

natte-銀河鉄道の夜

世界についてほとんど何一つ理解しないまま、私たちは日常生活を営んでいる。

生命の存在を可能にした太陽の光を生み出す機構について、私たちを地球にへばりつかせる一方、私たちが空間に放り出されてしまうのを防いでいる重力について、

あるいは私たちを形づくり、その安定性に私たちが基本的に依拠している原子について、

私たちはほとんど考えることをしない。

重大な質問をさしひかえるほど、ものごとを知らない子どもたちを除けば、

なぜ自然界はこうなっているのか、宇宙はどこから生じたのか、

それともずっと存在して来たのか、

時間がいつか逆転して結果が原因に先行することはないのか、

人間の知りうることには究極的な限界があるのかどうか、

といったことを不思議がり、時間をかけて考えるものは少ない。

しかし、ブラックホールとはどんなものか、

物質の最小のかけらは何か、

なぜ人は未来ではなく過去を憶えているのか、

はじめに混沌があったとしたら、いま秩序があるように見えるのはどうしてなのか、

なぜ宇宙はあるのか、こんなことさえ知りたがってる子どもたちがいる。

哲学と科学のかなりの部分は、このような問いに駆り立てられてきたのである。

むかし、世界は無限に積み重なった亀の塔の上に、平らな板が乗っていた。

宇宙はどこから来てどこへ行こうとしてるのか?

宇宙にはじまりがあるのか、またあるとすれば、それ以前に、どうゆうことが起こったのか?

時間の本性とは何か?

時間にはいったい終わりがあるのか?

物理学は、近年、新技術によって一大発展を遂げているが、これらが地球が太陽を回るのと同じくらいわかりきったことに思えるようになるのか、亀の塔と同じくらい滑稽に見えるのようになるのか、はたしてどちらに転ぶか、それは時間だけが(その本性がなんであれ)教えてくれる。

紀元前340年前、ギリシャの哲学者アリストテレスはすでに、著書「天体論」の中で、地球が平らな板ではなくまるい球だと信じるもっともな論拠を二つ挙げている。

ニュートンは、万有引力の法則を仮定した。りんごの落ちるのがきっかけになったと述べているが、ニュートン自身、重力の着想を得たのは坐って”黙想”にふけっていたときだという。

 

「ホーキング、宇宙を語る」スティーブン・W・ホーキング

絵 natte