星野道夫さんの言葉

“きっと人間には、二つの大切な自然がある。

日々の暮らしの中でかかわる身近な自然、

それは何でもない川や小さな森であったり、

風がなでてゆく路傍の草の輝きかもしれない。

そしてもう一つは、訪れることのない遠い自然である。

ただそこに在るという意識を持てるだけで、

私たちに想像力という豊かさを与えてくれる。

そんな遠い自然の大切さがきっとあるように思う。”

“生きる者と死す者。有機物と無機物。

その境とは一体どこにあるのだろう。

目の前のスープをすすれば、極北の森に生きた

ムースの体は、ゆっくりと僕の中にしみこんでゆく。

その時、僕はムースになる。そしてムースは人になる。”

“森の中から、コーン、コーンと不思議な音が聞こえてくる。

何だろうと思ってあたりに気を配りながら歩いてゆくと突然、

空から木の枝が降ってきた。じっと佇んで耳をすましていると、

森のあちこちでまるでスローモーションの雨のように木の枝が降っている。

年老いた森が少しずつ古い衣を脱ぎ捨て、次の時代へ移ろうとしているのだ。

植物たちの声、森の声を私たちは聞くことができるだろうか。

あらゆる自然にたましいを吹き込み、

もう一度私たちの物語を取り戻すことはできるだろうか。”

 

– 星野 道夫「別冊 太陽」より-

アラスカの自然や人々を愛し、写真を撮り、文章を書き、文化や伝承や神話や歴史を研究していた星野道夫さん。最後は、クマの命の一部になって亡くなられたという生涯でした。もっと、星野さんの言葉を聞きたい、そんな思いを抱きながら、写真集や本を開いて眺めています。

優しく、力強く、美しい言葉と写真を。

 

絵・文 Natte