“コーヒーと小説”

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コーヒーと小説 庄野雄治(アアルトコーヒー)

この本はずるい。タイトルも表紙も、絶妙にエロい。

「コーヒーと小説」

という言葉から広がる風景は、どんなだろう?

 

仄暗いうす明かりの下、空間に漂うコーヒーのにおいと豆を引く音。カチャカチャという食器と湯気のおと。

大きなふかふかのソファーに沈みながら、仕事の疲れを癒すようにめくる小説のページ。

夜のコーヒーと小説、町の外れのカフェ。

 

雨の日の休日、窓にはりつく、しずくの模様を眺めながら、静かに読む小説。肌寒い部屋とあたたかなブランケット。

午前10時のおだやかな光、丁寧に淹れた珈琲。小さなため息。

 

コーヒーと小説には、想い出が滲みやすい。

 

ほろ苦い恋愛、幼少の記憶、仕事の失敗、家族との小さなけんか。

 

さらりと読める短編小説が好きだ。

寝るまでのわずかな時間、仕事の休憩、電車の移動なん駅ぶん、待ち合わせの待ち時間。

隙間に入り込む、日常から離れたストーリーたち。

 

コーヒーに似合うすこぶる面白い小説10編は、少し湿度を含んでいて、色とりどりだ。ずるい本。

同じ著者の本で、コーヒーと随筆 という本もあるのだけれど、こちらもエロくてずるい。太宰や谷崎潤一郎らの色めかしい言葉が20編も詰まってる。

 

写真 keita inaba

文 natte